蟬が鳴くと思い出す…

今日8月12日は七十二候の「寒蝉鳴(ひぐらしなく)」です。

蟬のことを書きたくなりました。

夏になると、事務所は卸町五丁目公園の隣なので蟬の声が良く聞こえます。

ミンミンゼミ、アブラゼミなど。

いつも自然に触れることができてありがたいことだと思っています。

私が小学生のころ、昭和30年代は市内では至る所でセミの鳴き声を聞くことができました。

夏休みになると捕虫網をもって台原の野原に昆虫採集に行ったものです。

ニイニイゼミ7月上旬、夏休みが始まる前から鳴き始めるのは「ニイニイゼミ」です。

鳴き声はチージーですが、ニーとも聞こえます。

ニイニイの名は鳴き声からではないかと言われています。

明るい雑木林などにいる小型のセミです。

このセミは捕ってもそれほどうれしくないです。

いくらでもいて、取りやすいセミです。

アブラゼミ

夏の盛りに鳴くのはアブラゼミです。

けやきなどの高いところにいるので、取るのが苦労します。

鳴き声はジージー(ジリジリ)ジーです。

まさに地面までがジリジリト焼けそうな強い太陽に呼応するように鳴きます。

ジリジリという鳴き声が油で揚げるような声なので「油蝉」と名付けられました。

容貌は赤茶けて野良仕事をしているおじさんといった感じです。

ミンミンゼミ

7月の末から、その名の通りミンミン、ミーンミーンと鳴きます。

このセミは数が少なく、また機敏なのでなかなか捕まえられません。

おしっこをひっかけて、すぐ飛んで行ってしまいます。

セミは木の樹液だけで生きていますから体中が水分でいっぱいなんでしょう。

青みがかった姿がきれいです。

ミンミンゼミを捕まえるととてもうれしいものでした。

ヒグラシ

ヒグラシのあの哀愁を帯びたカナカナ…という鳴き声はその習性から、日の出前や日の入り前後の比較的気温の低い、薄暗い時間帯に聴こえてきます。

特に夕暮れ時に聴こえてくるあの響きは物悲しい感じを受けます。

“日を暮れさせる”といういみでヒグラシです。

ツクツクボウシ

8月も中旬をすぎると鳴きだします。

ツクツクボウシはオペラ歌手のように歌が上手です。

・イントロ部分

まずは、鳴きはじめの部分です。

ツクツクツクツクツクツクツクツク
ツクツクオーシッ!
ツクツクオーシッ!

ここから一気に盛り上がっていきます。

ツクツクオーシッ!

14、15回ほど繰り返しながら、徐々に、テンポを上げていきます。

だんだんと盛り上がって、調子もあげていき、さらにアップテンポになっていきます。

サビ(エンディング)

ツクツクオーシッ!
ツクツクオーシッ!……

数回繰り返します。

尻上がりの発音で、2、3回繰り返します。

ジーーーーーーー

という声で、鳴き終わり、エンディングを迎えます。

サビからエンディングの方の切迫した歌い方は、ひと夏中遊びほけていた少年は“宿題は終わったか、宿題は終わったか、”と責められているように聞いたものです。

斎藤茂吉の歌 『午後』

寒(かん)蝉(せん)は鳴きそめにけり
なりはひのしげく明けくれて幾日(いくひ)か経たる

(歌集あらたま 大正六年) 

(ひぐらしがなきはじめた

 仕事が続いて熱中して何日かした

 午後に)

茂吉の「作歌四十年」という自選自解の書に次のように解説しています。

【ここの『寒蝉』(かんせん)は蜩(晩蜩、晩蟬、ひぐらし)のつもりであった。

この蜩は伯林や維也納では聞かれぬものだけに、日本人の感情生活の基調をなす原因となり得たものである。】

※伯林や維也納とは、茂吉が留学したベルリンとウィーンです。