ホトトギス

ひるも夜もしきりに啼きし杜鵑(ほととぎす)やう(よう)やく稀に夏ふけんと 斎藤茂吉歌集 [白き山](昭和二十一年)より

初夏にカッコーやホトトギス がわたってくる。

彼らは海外から日本に子作りにやってくる。
普通の鳥は春になり増えてきた小虫や草の実などを集め雛に与えるが、カッコー類は他の鳥に托卵する。

オオヨシキリやウグイスなどが托卵先となる。

カッコーは親鳥のいない隙を狙い、卵を生みつける。
カッコーは早く孵化し、巣の持ち主の卵を巣の外に落としてしまう。

茂吉は戦後、故郷の山形に疎開した。
大石田に住んだ二年ほどの間に作られた歌を収めたのが、傑作「白き山」である。

茂吉は散歩を日課とし、歌を読んだ。

カッコーは、渡ってきた頃は托卵先を探すのが必死である。
親に見つかると追っぱわれる。

そこで、啼き方もカッコ、カッコ、カッコと切迫している。

しかし、托卵の済ませると、いかにもせいせいとした声で、
カッコ〰、カッコ〰と のうのうと啼く。

更に夏が深まってくると(更けると)もう啼かなくなる。
茂吉の実感がこもっている。

茂吉は大石田に疎開したときの二藤部兵右衛門家の離れ「聴禽書屋」(ちょうきんしょおく)と名づけた。

(和)