夏は来ぬ

庭のえさ台に毎日来ていた、シジュウカラやカワラヒワ、メジロ達が来なくなりました。

山に帰ったようです。

冬鳥のツグミはシベリアに帰る前に、 ゴニョゴニョ とさえずりの練習らしき声を出していなくなりました。

3月にはツバメの初認を確認し、ウグイスは チャッチャッ という地鳴きから ホーホケキョ と泣き出しました。

最初のころはまだ下手です。
恋のライバルが現れれば、上手に歌うことでしょう。

“卯の花の匂う垣根に ホトトギス早も来鳴きて”

と歌いだす『夏は来ぬ(なつはきぬ)』は、明治26年に発表された日本の歌曲です。

カッコウが来ると、ああ夏が来たと実感できます。
近郊の山野で新緑の雑木林に入り、カッコウの声を聞くと、心が清らかになります。

ちなみに 卯の花 とは ウツギ のことです。
仙台では5月~6月ころに白い花を咲かせよく見られます。

旧暦で、4月を卯月というのは、卯の花が咲く季節から名付けられました。今年の卯月1日は、5月18日です。

歌の中で、ホトトギスと言っているのは、郭公(かっこう)、杜鵑(ほととぎす)等の総称です。

仲間には、ジュウイチ、ツツドリもいますが、山の鳥のなので、普通に見聞きできるのはカッコウとホトトギスです。

カッコウの鳴き声は、ご存知の “カッコー、カッコー” です。
ホトトギスは、最初に大声で「キョッキョッ キョキョキョキョ!」と鳴き、
だんだんへこたれてきて「ホ・ト・ト・ケ・サ」となります。

カッコウは普通は昼間に鳴きますが、ホトトギスは夜に鳴きます。

“おぐらき夜半を鳴くホトトギス” という童謡がありましたね。

カッコウ類は子育てをしません。

他の小鳥に托卵し、卵から育ててもらいます。

托卵の相手になる鳥は種類によって決まっています。
カッコウはモズ、ホオジロ、オオヨシキリなど。
ホトトギスはウグイス、ミソサザイなど。

従って、宅卵の相手のいないところには、カッコウ類はいません。

東京から転勤してきた鳥好きの友人は、仮住まいのホテルでの最初の朝に、カッコウが鳴いていた、といって感激していました。

東京ではなかなかカッコウを聞けなかったのでしょう。

私の事務所の近辺では今まで一回もカッコウの声を聴いたことがありません。

緑はないし、スズメとカラス以外に野鳥はいないので無理はありませんね。

「このごろは、仙台ではカッコウはホトトギスに負げだんでねえべが」と嘆いている仙台人がいました。

確かに、私の子供のころは聞かれるのはカッコウのみで、ホトトギスの鳴き声を聞くと妙にうれしくなったものです。

近頃は、オオヨシキリがいっぱいいる自宅近くの広瀬川に行ってもホトトギスの声をよく聞きます。カッコウが托卵で負けたのかもしれません。

仙台の藩祖、伊達政宗公は鳥が好きでした。
政宗の花押(書き判)はセキレイの図柄です。
尻尾を振ってぴょんぴよんと飛び跳ねそうなくらい、いきいきと書かれています。

政宗が江戸に参勤交代に出かける前の話です。
実はこれが最後の参勤交代となり、政宗は江戸で亡くなります。

政宗は、出発前に何としても仙台でカッコウの声を聞きたいものだと思い、散策しました。その頃は山城である青葉城は生活にきついので、平城(ひらじろ)である若林城(若林区の名の由来です)に住んでいました。

従って、近所の南小泉、遠見塚、霞の目、沖野、私の住んでいる上飯田辺りを巡り歩きました。しかし、カッコウの声は聞こえません。

そこで、青葉区の青葉城の近くの経ヶ峯まで足を伸ばしました。
しかし、そこでもカッコウの声は聞くことができなかったそうです。

経ヶ峯には、瑞鳳殿があり政宗が静かに眠っています。

(和)